自転車と長く付き合っていくために、きちんと行いたい定期的なメンテナンスや点検。
大きな修理が必要にならないように、日頃から自宅でできる簡単なメンテナンス方法を、narifuri名古屋店のメカニックを担当しているスタッフが解説します。
セルフメンテナンスの重要性

<目次>
・メンテナンス、点検の重要性
・タイヤの点検
└ タイヤの状態のチェック
└ 空気圧のチェック
・注油
└ 注油のタイミング
└ チェーンの注油方法
・雨の日のお手入れ
└ 雨に濡れた後の対応方法
└ おすすめの用品
■メンテナンスや点検って本当に必要ですか?
メンテナンスや点検が重要な理由は、大きく分けると2つあると思います。
1つ目は「安全性」です。これは想像できると思うのですが、タイヤがスリップする、ブレーキが効かないなどのトラブルは大きな事故に繋がる恐れがあります。事故を未然に防ぐためにメンテナンスや点検は重要です。
2つ目は「経済性」のためです。これは意外と思われる方もいると思うのですが、自転車が酷く傷んだ状態だと逆に修理費用がかかってしまうケースがあります。こまめなメンテナンスをすることで早めに不備が見つけられるので、結果的に安く済む。そのためにメンテナンス・点検が重要になってきます。
■narifuriで行っているメンテナンスとは?
narifuriで自転車をご購入いただくと、初回点検と定期点検がセットになった「メンテナンスパック」が無料で付属します。
初回点検では、初期馴染みと呼ばれる初期にトラブルが起こりやすい箇所を中心に点検を行います。
定期点検では、タイヤ・ブレーキパッドが摩耗していないか、ブレーキが利くか、前後のホイールに歪みがないかなどの複数箇所を点検します。
異音などの実害が出てからご来店されるケースが多いのですが、実害が起こる前に点検で不具合を見つけられることがベストなので、「点検のために」と気負わずに、空気入れなどのタイミングでいつでもお気軽にご来店ください。
■空気入れはどれくらいの頻度で行うのが良いですか?
1ヶ月に1回程度空気を入れることをおすすめしています。
走行距離によって頻度は異なるので、タイヤを触って確かめてみましょう。タイヤを軽く抑えたときに凹む場合が空気を入れるタイミングです。
最初は「凹む」の感覚が掴みづらいかと思うのですが、さすがに2ヶ月ほど経つと分かりやすく柔らかくなっていることを感じられると思います。日頃から実際にタイヤに触れてみて、タイヤの状態を触った感覚で覚えることを目標にしていただくと良いでしょう。
■家でできるタイヤの点検方法を教えてください。
タイヤ点検はざっくり分けると、タイヤ状態 と 空気圧 の2つをチェックします。
■タイヤ状態のチェックとは?
タイヤ状態のチェックは、ひび割れ、異物の付着、ゴムが薄くなっていないかなどを確認していきます。
ひび割れは経年劣化の場合もあるのですが、空気が不足した状態で自転車に乗って、タイヤが潰れて折り曲げられることでひび割れが起きることが多いです。タイヤに空気を入れてあげることがひび割れを防ぐことにも繋がります。

異物の付着は、具体的には石が多いですね。雨の日に付着した石が翌日もくっついている状態で乗って、そのまま深く刺さってしまいパンクに繋がることが多いです。パンクしてしまう前に除去してあげる必要があります。
またタイヤのゴムが薄くなって、ゴムの下の繊維の層がうっすら透けてしまうことがあるのですが、これは経年劣化が原因なことがほとんどですね。タイヤサイドのゴムの劣化を早めるのは、紫外線による影響が大きいです。自転車を外置きにしていると起こりやすいので、できれば屋内で保管してもらうのが良いですね。
■空気圧のチェックとは?
実はどのタイヤのサイドにも「推奨空気圧」が書かれています。この推奨空気圧通りの空気圧になっているか、というのが確認のポイントです。

空気圧が少なすぎても多すぎても、走りにくさを感じたり、パンクなどのトラブルが起こりやすくなってしまいます。
空気圧の測れる空気入れを使うと確認が簡単にできるのでおすすめです。空気圧の単位は複数あるのですが、「PSI」と「BAR(バール)」の2種類が良く使われる単位です。

おすすめの空気入れは「SPORT FLOOR DRIVE 3.5」。
大きなゲージなので、空気圧も確認しやすいです。「PSI」と「BAR」、どちらの表記もあるので、どちらの単位でも確認できます。
木製のハンドルや、スマートな見た目も良いですよね。
■注油について教えてください。
注油も自宅でできるメンテナンスですね。注油していただきたいタイミングは、大きく2つあります。
1つは、雨の日もしくは路面が濡れている状態で自転車に乗った後。
1つは、チェーンオイルが切れてきたと感じたタイミングでの注油です。これは少し難しいのですが、目安としてはキュルキュルという音がしてきたら注油してください。
■チェーンオイルが切れたことを確認するには?
チェーンに実際に触ってみることで確認できます。指は汚れてしまうのですが、タイヤの点検と同じく自転車の状態を触って分かる状態になると不具合にも気づきやすくなります。
チェーンを触ったときにベタベタしたオイリーな汚れが指に付くか、それともドライな汚れが付くかで判断できます。
オイリーな汚れが付いた場合は、まだオイルが切れていない証拠です。まとまらない消しゴムのカスのようなドライな汚れが付く場合は、オイルが切れていると判断して良いと思います。

(左)ドライな汚れ (右)オイリーな汚れ
晴天下で乗った場合もおおよそ200~300km乗るとチェーンオイルは切れてしまいます。雨天時に乗った場合は注油してもらいたいのですが、晴天下で乗り続けている場合でもたまにチェーンに触って注油のタイミングをチェックしてみてくださいね。
■注油方法を教えてください。
雨に濡れている場合は以下の工程がおすすめです。
① 水を切る
② 注油する
③ オイルが全体に行き渡る時間を設ける
④ 表面の余分なオイルを布で拭き取る
① 水を切る作業です。雨に濡れていなければ、この工程は省略して構いません。
一番簡単なものだと、自転車を10cm程度持ちあげて落とすというのを何度か繰り返して、衝撃で水を切る方法があります。もしくは、タオルでチェーンを拭いてあげても良いです。ある程度水を落とした方が注油するチェーンオイルの持ちが良くなるので、水はしっかり切りましょう。
② 水が切れたら、チェーンオイルを注油していきます。
水置換性のオイルがおすすめですね。これは、多少水が残っていても、水を追い出しながら潤滑してくれるオイルなんです。ただしあまりにも水が残っていると、水置換性のオイルでも薄まってしまうので、なるべく水は切った方が良いです。

WAKO'S:CHAINLUB ※実店舗のみでの販売
このオイルはスプレータイプなので、チェーンに向けて噴射してください。このとき、チェーン以外の場所に付かないようにしましょう。特にブレーキ関連のところにオイルが付いてしまうと、ブレーキが利かなくなってしまうので注意が必要です。スポイトタイプのオイルもあるので、お好みのタイプを選んでください。

③ チェーンに一周注油できたら、ペダルを回転させながら全体にオイルが行き渡るようにします。そして少し時間を置き、中に浸透する時間を作ります。
浸透時間は使っているオイルにもよりますが、一晩くらい置いておけばどんなオイルを使っていても十分な浸透時間です。
④ 十分にオイルが馴染んだら、表面の余分なオイルを拭き取ります。オイルは「内部へ浸透しているか」が重要なので、表面のオイルはそんなに大事じゃないんです。逆に、表面にオイルが付いていると砂などが付着してしまい、パーツの寿命を短くしてしまう原因にもなるので拭き取ります。
これで注油作業は完了です。

■雨の日に自転車に乗った後、注油の他に必要なお手入れは?
水を切る作業は必ず行ってもらいたいですね。水が付いたまま放っておくと、錆びるリスクが上がってしまいます。注油の前に行ってもらう水を切る作業をもう少し詳しく説明しますね。
水はフレームの中に溜まるので、中に溜まっている水を抜いてあげます。方法としてはサドルを抜いて、ひっくり返すというのが一番簡単な方法なのですが、場所を取ってしまうんですよね。
場所が確保できない、ひっくり返すのは少し面倒……という場合は、自転車を90°傾けてあげてください。

フレームには水抜き穴が付いているので、自転車を傾けて、水抜き穴やサドル部分から水を抜いてあげましょう。
雨で砂埃も車体に付着してしまっている場合は、濡れた雑巾で車体を拭いた後に、乾拭きしてあげましょう。砂埃がひどい場合に強い力で乾拭きすると車体に細かい傷が入ってしまう恐れがあるので、濡れた雑巾でまず拭ってあげるのがおすすめです。

■雨の日に自転車に乗る人へおすすめの用品は?
水でビシャビシャになることを防ぐために、泥除け(フェンダー)はあった方が良いですね。乗っている人が濡れなくなるというのもあるのですが、自転車にも水がかかりにくくなります。雨から自転車を守るためにも付けてあげるのがおすすめです。

SKS:X-TRA-DRY 26”
SKS:S-GUARD
※実店舗のみでの販売
セルフメンテナンスで気になった箇所がある場合や、セルフでは難しい点検はお気軽に店舗スタッフまでご相談ください。
大切な自転車に可能な限り長く乗るためのお手伝いをさせていただきますので。